北海道の鉄道インフラを活用する会

北海道新幹線・JR在来線・札幌市営地下鉄など北海道内の鉄道インフラを活用するアイデアを提言していきます

在来線高速化構想#2| 今からでも欲しい!在来線高速化構想に必要な車両

前回は、在来線高速化構想に伴う立体交差化について検討した。

今回は、みんな大好き、「ぼくのかんがえたさいきょうのざいらいせんこうそくかたいおうしゃりょう」について語っていく。

ところで、JR北海道の在来線車両を製造するメーカーは、気動車特急が富士重工業(スバル)⇒川崎重工業、電車がステンレス車は川重メイン、アルミ車が日立となっており、かねてから川重への依存度が高かったが、735系でのアルミ車試作を経て、737系でアルミ車を本格導入するなど、最近になって日立が食い込みを図っているように見える。
735系導入当初は、JR北海道社内における「ステンレス車両(=川重)派」と「アルミ車両(=日立)派」の軋轢があったとかなかったとか。内部の人間ではない筆者には、何があったのかわからないが。

 

さて、本題に戻ると、在来線高速化構想において車体寸法的に在来線規格の車両を導入すると仮定した場合、望ましい車両の性能はどのようなものだろうか。技術的なハードルが低い順に、望ましい性能を挙げてみる。

 

1)最高時速160㎞/h以上を出せる高速性能を持つ車両
2)低騒音、車内静粛性に優れた乗り心地のよい車両
3)非電化路線にも直通できる駆動方式(いわゆる「バイモード」)の車両
4)軌間可変台車(いわゆる「フリーゲージトレイン」)による新在直通運転が可能な車両

 

1)は、すでに狭軌在来線規格であっても実現しているので、特段の問題はないだろう。

2)も、台車や電気機器の技術革新とロングレール化によって静粛性に優れた車両がすでに多数作られており、問題は少ないだろう。

3)については、すでに日立が英国で電車と電気式ディーゼル車どちらとしても運転が可能な「バイモード」車両を多数納入しており、JR東日本の豪華列車「TRAIN SUITE 四季島」でも実現している技術であることから、技術的ハードルは低いものと思われる。バイモード車両の非電化区間における駆動方式は、今のところ電気式ディーゼルが有力だが、技術革新が進めば水素エンジンや燃料電池に換装することも可能だろう。本稿では、以下、非電化区間では電気式ディーゼル車として走る前提で話を進める。

 

(イギリス鉄道800形)

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%82%AE%E3%83%AA%E3%82%B9%E9%89%84%E9%81%93800%E5%BD%A2

 

Wikipediaによれば、英国で導入されている日立のバイモード車両の最高運転速度は電化区間で201km/h、非電化区間で185km/hとされており、標準軌であることを割り引いても、バイモード車両による狭軌在来線での160km/h運転への技術的ハードルは低いように思われる。もちろん、北海道の厳しい気候条件下で走る車両であるから、英国と同じシステムの車両をいきなり持ってきてもすぐに走れるとはならないであろうが、ここ最近のJR北海道と日立の取引状況を踏まえれば、開発を依頼する価値はあるのではないか。

もし、160㎞/h運転に対応したバイモード車両(以下「高速バイモード車両」という)が導入できれば、旭川方面は、札幌~旭川間電車、旭川稚内・北見・網走方面はディーゼル車として走る直通特急を復活させ、在来線高速化の恩恵を道内各地に波及させることができる。

新千歳空港方面については、札幌~新千歳空港間の高速化+新千歳空港駅のスルー化改造を前提として、札幌~新千歳空港東室蘭間は電車、東室蘭長万部間はディーゼル車として高速バイモード車両による特急を走らせれば、胆振地方に在来線高速化の恩恵を波及させることができる。

また、高速バイモード車両ならば、2020年に北海道エアポートが構想していると北海道新聞で報じられた「新千歳空港旭川間を1時間半で結ぶ直通列車」の実現も容易になるだろう。この場合、新千歳空港~(室蘭線経由)~岩見沢間はディーゼル車、岩見沢旭川間は電車として高速走行することになる。

(追記)

新千歳空港旭川間の直通列車は室蘭線経由で走る前提で書いたが、在来線高速化構想が実現したら新千歳空港〜札幌〜旭川のルートでも1時間半の達成は可能だ。今さら室蘭線に投資をするのは考えにくく、札幌経由ルートになるかもしれない。

ただし、札幌〜新千歳空港間を複々線化しないのであれば、線路容量の関係から室蘭線経由のルートも考えられるかもしれない。

 

帯広・釧路方面は、すでに石勝線という高規格幹線が存在しており、石勝線列車火災事故のトラウマから高速化が停滞してきたが、在来線高速化構想実現の折には、こちらにも高速バイモード車両を導入し、改めて安全を優先させつつも軌道・車両の強化を図り、スピードアップに取り組むことによって、釧路まで全通する道東自動車道から客を「取り戻す」ぐらいの攻めの姿勢を見せてほしいものである。

4)のフリーゲージトレインは、2024年現在、最も技術的なハードルが高い車両である。北陸新幹線や西九州新幹線への導入を目指した技術開発が頓挫した後、2018年に近畿日本鉄道近鉄)グループが在来線規格のフリーゲージトレインの開発を行う意向を表明したものの、2022年に開発を継続していることが明らかになったこと以外、近鉄から具体的な進捗は公表されていない。

 

近鉄による2018年当時のニュースリリース
https://www.kintetsu.co.jp/all_news/news_info/freegauge.pdf

(2022年当時の日経クロステックの記事)
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/06870/

 

フリーゲージトレインが実用化できれば、北海道新幹線部分を「高速道路」、在来線高速化区間は「国道バイパス」、在来線区間は「一般国道」のように縦横無尽に走れる、正に「夢の車両」だが、その分技術的ハードルは極めて高い。
温暖地である九州ですら整備新幹線レベル(最高速度260km/h)の性能を実現できず、その後の近鉄による開発の進捗があったとしても、近未来に国産のフリーゲージトレインが導入できる可能性は極めて低いと言わざるを得ない。
海外で実績のあるタルゴ式車両を持ってくるというのも、北海道の気象条件を考えると国産車両以上にハードルが高そうである。

 

よって、本稿の結論としては、まずは高速バイモード車両の開発に着手すべきと考える。
高速バイモード車両が開発できれば、たとえ在来線高速化構想がすぐに実現しなくても、789系特急形電車、キハ261系特急形気動車の後継車両として十分に活躍が見込まれると思うが、いかがだろうか。

 

次回は、在来線高速化構想とも関連する「新千歳空港駅スルー化改造計画」について語ってみたい。