北海道の鉄道インフラを活用する会

北海道新幹線・JR在来線・札幌市営地下鉄など北海道内の鉄道インフラを活用するアイデアを提言していきます

在来線高速化構想#1|どうやって立体交差化するのか?

2024年4月1日、JR北海道は「中期経営計画」を公表した。
この計画の中で、同社は北海道新幹線幌延伸開業後の検討課題として「札幌~旭川間及び札幌~新千歳空港間の在来線高速化」という構想(以下「在来線高速化構想」と総称する)を打ち出した。

 

https://www.jrhokkaido.co.jp/CM/Info/press/pdf/20240401_KO_chukikeikaku.pdf

 

在来線高速化構想によれば、札幌~旭川間を最速60分(現行最速1時間25分)、札幌~新千歳空港間を最速25分(現行最速33分)で結ぶという野心的な構想となっている。

さて、この構想を実現する最大の障害は「踏切」である。

今回はこの点を検討していく。

踏切がある限り、「非常ブレーキをかけてから600m以内に停止できること」という安全上の規制をクリアして、現在の在来線における最高速度130㎞/h以上の高速列車を走らせることは困難である。
すでに京成電鉄成田スカイアクセス線北越急行線、青函トンネル内などで最高速度130㎞/h以上の列車が走った実績があるが、これらの路線はいずれも完全立体交差で踏切がない路線(区間)だからこそ実現できたことである。
よって、多数の踏切が残存している北海道内の在来線を高速化するには、踏切の除去=立体交差化が不可欠である。


立体交差化の手法としては、以下の3つが考えられる。

1)鉄道の線路を高架化する
2)鉄道の線路を地下化する
3)鉄道をまたぐ道路を立体交差(高架orアンダーパス)化する

厳密にいえば4つだが、3)は道路側が対応することなのでひとくくりにさせてもらった。
それぞれのパターンについて、メリット、デメリットを考察していこう。

 

1)の鉄道高架化だが、在来線高速化構想の対象区間では、札幌駅 、野幌駅旭川駅新札幌駅千歳駅の各駅周辺で部分的に実施されている。
(メリット)
・鉄道による地域の分断を解消できる
・高架下のスペースを活用できる
・(防音壁等がなければ)列車からの眺望が得られる
(デメリット)
・営業路線に隣接した土地に高架を作る場合、用地買収が必要とな る場合がある
・都市部の場合、日照権や騒音の問題が発生するおそれがある
・防音壁に囲まれた高架線の場合、列車からの眺望が得られない
・雪や風による影響を受ける

 

2)の鉄道地下化は、地下鉄や北海道新幹線の札幌市内トンネル区間と同様、地下トンネルで道路と立体交差する。
(メリット)
・鉄道による地域の分断を解消できる
・地上路線の直下にトンネルを掘る場合、廃線となった地上部を活用できる
・雪や風による影響がない
(デメリット)
・(一般的に)高架化より費用が高い
・列車からの眺望が得られず、顧客の逸走を招くおそれがある

 

3)の道路側の立体交差化は、主に郊外部で広くみられる手法であ る。
(メリット)
・鉄道側は大きな改修は不要
(デメリット)
・鉄道による地域の分断はそのまま
・道路管理者側の意向に左右される
・雪や風による影響はこれまでと変わらない

 

これらの手法を在来線高速化構想の区間にどのように適用するか考えてみよう。

 

まず、函館線札幌~旭川間についてだが、おおまかに以下の区間に分ける。


1)札幌~岩見沢
2)岩見沢旭川

 

1)の札幌~岩見沢間だが、札幌都市圏の人口密集地帯から岩見沢市の郊外住宅地まで連続して人口密度が高いことから、原則として 鉄道高架化による立体交差化が適しているものと考えられる。 この区間では、多数の普通・快速列車も運転されることから、追抜 設備を適宜配置した高架路線に作り替えるのが妥当と思われる。

2)の岩見沢以北については、人口が希薄な田園地帯を突っ切り、 主要駅周辺にのみ住宅地が存在していることから、原則として道路側の立体交差化による踏切除去が望ましいと考えられる。

 

つぎに、千歳線札幌~新千歳空港間を見ていこう。
この区間では、新札幌駅千歳駅付近は高架化、主要な道路との交差部はすでに道路側の立体交差化がなされているので、残る小規模な踏切については道路側の立体交差化を原則とするのが通例と考えられる。
しかし、この区間はひとたび輸送障害が発生すると新千歳空港の利用客に大きな影響を与える区間である。最近は冬季のドカ雪により札幌〜新千歳空港間の列車やバスが運行できず、旅客が空港から移動できない事態がたびたび発生しており、地球温暖化に伴う異常気象によってこうした事態は増えていくことが予想される。

また、この区間エスコンフィールド北海道の開業に伴い、野球の観戦客輸送と空港利用者輸送が混在し、輸送力が逼迫している区間でもある。
よって、(財源のことを気にしないならば)札幌~新千歳空港間の線路直下に地下急行線を建設して複々線化し、地上線は普通・ 区間快速・快速・貨物列車用、地下急行線(途中駅は設置しないことで建設コスト縮減を図る)は(仮称)空港快速・ 特急列車専用に分離することで、札幌~新千歳空港間の速達化と冬季の安定輸送が可能になると想像する。


また、急行線を地下化するのであれば、いっそのこと札幌~新千歳空港間に三線軌条の(仮称)北海道新幹線延伸線を地下線で建設し、フル規格新幹線新千歳空港まで乗り入れさせれば、速達化と冬期間の安定輸送を両立できる。

この「北海道新幹線新千歳空港まで延伸する」というのは、このブログを作る主だった動機なので、後日詳しくアイデアを述べたい 。

 

次回は、「今からでも欲しい!在来線高速化構想に必要な車両」についてアイデアを述べたい。